『職業としての小説家』を読めば村上春樹がノーベル賞候補になった理由がよくわかる

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

 少し前になりますが、村上春樹が雑誌『MONKEY』で自身の小説家としてのキャリアを振り返ったコラムを書いていました。 いままで余り触れてこなかった仕事論をテーマにしているため、結構面白くて楽しみにしていました。

このコラムに描き下ろしを追加したものが『職業としての小説家』なのですが、これはホントに名作で、特に海外展開のくだりなんかビジネスマンに一読をおすすめします。

ここ数年、ノーベル文学賞の候補に村上春樹の名前があがることが多くなりました。現在の日本人作家で世界で読まれているのは村上春樹ぐらいだと思いますが、本書を読むと、村上作品がなぜ普及したか、よくわかります。Murakamiで通じますもんね。

村上春樹の海外翻訳は、講談社のアメリカ法人から始まったそうです。普通はそうして委託するだけで終わりなのでしょうが、おそらく業績が芳しくなかったのでしょうか、村上本人が渡米して、現地の出版エージェントを探し、翻訳家を含めた村上チームでアメリカでの販売展開を行ったそうで、今も同じチームで運営されているとか。

この「本人が渡米してプロジェクトの立ち上げに関わっている」ことがなにより成功の秘訣に感じます。

もちろん作品のクオリティが一番大事。でも、それだけではダメで、マーケティングが大切。そして、海外展開のように誰もノウハウがない、いわば新規事業は提案者自らがオーナーシップをもって、自分でプロジェクトを回していくことが成功のキモ。

商売の普遍的な真理だと思いますが、一見関係なさそうに見える文学の世界であっても同じことなんだなあと気づかされます。もしかしたら本人は意図せずにアメリカに住みたかっただけだったり、純粋な好奇心だけで動いているのかも知れません。いや出身が商売人だからもしかしたら意図してやっているのかな。

いずれにせよ村上作品は、品質とマーケティングがうまく絡まった、世界に通用するコンテンツ・プロダクトであることは間違いありません。24日に発売される『騎士団長殺し』もホントに楽しみです。