あらすじが即ネタバレ 宮部みゆきの最高傑作『ぼんくら』

ぼんくら(上) (講談社文庫)

本棚を整理していると、どうしても昔の本を読み返してしまいます。そんなわけで、宮部みゆき『ぼんくら』を再読したのですが、やはり面白くて、こうしてレビューを書くことにしました。

 
私は『ぼんくら』が数ある宮部みゆき作品の中で最も好きです。ストーリーが面白いのはもちろんですが、それだけではなく、本書は構成そのものが壮大なトリックになっています。
 
宮部みゆきといえば名作『火車』をはじめとした本格ミステリーが有名ですが、キャリアの初期から『本所深川ふしぎ草紙』のような時代小説も手掛けていました。
 
時代小説にありがちな短編集ってあるじゃないですか。町人や商人が主人公で、少し不思議な出来事や人情あふれるドラマがあり、といった小噺のもの。宮部みゆきも似たような、失礼だけどよくある感じの、時代小説も出しているんですね。
 
なので本屋さんで手に取ったきっかけも、たまには軽い短編でも読もうかな、という気持ちだったのだと思います。手持ち無沙汰だから時間がつぶれればいいや、てな具合で。
 
最初の章のタイトルは「殺し屋」。ある夜、とある長屋で太助が殺される。残された妹・お露は茫然自失で「殺し屋がやってきて兄を殺した」と。でも、夜分に人が通った音は誰も聞いていない。ましてや、お露の着物にはべったりと返り血がついている。殺し屋なんていなかったのではないか。殺したのはおそらく…。でも、調べるほどに、寝たきりの父親や、遊女にかまけていた太助、など止むに止まれぬ事情が出てきて…。
 
といった具合に、次の章「博打打ち」でも同じ長屋を舞台として、似たような人情小噺が続いていくわけです。ああ、よくある人情話か。読み手はよくある時代小説の連作かと思いながら、気を抜いて読んでいくのですが、次第におや、と。
 
ちょうど同じ頃、ぼんくらな主人公である井筒平四郎がなぜ同じ長屋でトラブルが続くのか、を疑問に感じはじめ、これまでの小さな小噺は実はすべてつながった大きな1つの事件であることが明らかになっていくのです。
 
 
この『ぼんくら』には元ネタがあり、半村良『どぶどろ』をオマージュとして書いたことを宮部みゆき自身が認めています。確かに『どぶどろ』も同じ構成なんですが、短編から長編につないでいく上手さは『ぼんくら』が圧倒してるでしょう。マイベスト宮部です。