2015年12月31日に「Fresh News Delivery」が更新を停止した。
ぼくがこのニュースを知ったのは2016年に入ってからだったけど、年内にアクセスしていたなら間違いなく自分の2015年ベスト・ニュースになっていた。それぐらいの価値があるブックマークだったと思う。
ぼくが「Fresh News Delivery」(以下、FND)を知ったのは2005年のことだ。それ以来、2015年12月31日の閉鎖に至るまで、およそ10年間に渡り、ほぼリアルタイムでFNDの成長と管理人ハイロックさんが評価経済を駆け上がっていくところをモニター越しに見てきた。
2005年、当時のインターネット業界は、まだGoogle AdSenseやアフィリエイトが本格化されていなかった。つまり「稼ぐ」ことが出来なかったから、プロフェッショナルが少なく、アマチュアが多い。中でも中心的な存在だったのは、毎日リンクを更新する個人ニュースサイトだったと思う。
個人ニュースサイトは今でもいくつかあるが、そのスタイルは今も変わらずテキスト・リンクを羅列するというスタイルだ。オタク系?のカルチャーからスタートしたからだろうか、デザイン性というより情報のツメコミ度を重視する雰囲気があった。
最初にFNDを知ったのも老舗ニュースサイト「Everything is gone」がリンクソースにしたからだと思う。(余談だが、その後も「Everything is gone」は数回に渡ってFNDをピックアップし、FND側も随所で「Everything is gone」に引き上げて貰ったという趣旨のコメントを残した。)
最初の印象は、「グラフィックデザイナーが作った個人ニュースサイト」で、ピックアップしていたトピックスもよくある海外ニュースに一言コメントを足した感じだったし、よくある個人ニュースサイトの一つだったと思う。
しかし、「モノのセレクト」というコンテンツの金脈が発見されると、俄然オリジナリティが高まっていく。 次第にテキストのテンポも良くなっていって、「これ」を「こうして使うのがイイ」という歯切れの良いリコメンドに本当にワクワクした。2007年にはYahoo!カテゴリに登録され、2012年には「モノ」にフィーチャーして書籍化もされるなど、ウェブ発コンテンツの一つとなった。
でも、ぼくがFNDを本当にリスペクトしたのは、その情報の見せ方がなにより合理的でスタイリッシュだったからだ。
「短い文字数で端的に書く」というスタイルはTwitterでスタンダードになったし、当時としては大きいサイズだった250ピクセルのスクエア型アイキャッチはinstgramに近いビジュアル志向を感じる。こう書くと大げさのようだけど、「テキストは短く」「ビジュアルで表現」というモバイル時代に当たり前となったスタイルを、本当にFNDは10年前からやっていたのだ。
2011年にはFrash Mailというメーリングリストのコミュニティも作った。これも新しいスタイルで、SNSが全盛の中、フレッシュなネタを「メーリングリスト」で交換しあうというコミュニティだった。ぼくは参加していないので内情はわからないが、メーリングリストという古臭い手法に回帰したことに新しさを感じたのを覚えている。
そのほか、ワンカラム・短いテキスト・大きめアイキャッチというFNDのデザイン・テンプレートを守りつつ、洗練された遊び心もあった。
例えば、一定の割合で美女のアイキャッチと一緒にポストされるサイト紹介エントリー。サイト紹介のエントリーが同じストリームの載せるというのが斬新だった。また、毎年恒例で紹介されるスポーツイラストレイテッドのスイムスーツ特集。どことなく感じる90年代のストリート感覚が、ウェブのフォーマットでうまく表現されていたのだと思う。
FNDがヒットしたのは時代のトレンドや諸所の幸運もあったからだろうし、この広いネットの世界でぼくがたまたまFNDを発見したのもまた偶然だ。でも、この偶然によって、貴重な情報だけでなく、なにより日々のちょっとしたワクワクを体験できた。
さよなら、Fresh News Delivery。10年間、本当にありがとうございました。