はてな上場によせて(3930:はてな)

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はてなが2016年2月24日に上場します。ユーザー目線の思い入れとビジネスマン目線の展望を書きました。

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2016年2月24日、株式会社はてなが東証マザーズに上場します。

今では普通のメディア企業になったはてなですが、インターネット普及期に思春期を過ごした方のなかには、思い入れがある方も多いのでは。独特の思想をもったユニークな会社でした。

 

伝説的なインタビューから

はてなは、スタートしたときからユニークで、おぬし只者ではないな的な雰囲気がぷんぷん漂う会社でした。

創業サービスだった「人力検索はてな」。ネーミング、インターフェイスともに本当にダサかった。デザイナーが入り洗練されたデザインに置き換わっていますが、今でも「はてなダイアリー」にその片鱗を見ることができます。

当時の空気感が伝わる2003年当時のインタビュー記事がまだ残っていました。インタビューを受けているのは創業者の近藤淳也会長で、インタビュアーはGREEを創業する前の田中良和さんです。こんな日本の産業史の1ページのような記事が残っているんですよ、インターネットってホント凄いなと思います。

このインタビューを読むと、独特のカルチャーを感じませんか。

だって、人力検索はてなは質問1回が60円、はてなが受け取る手数料収入が1件の手数料が20円なんですよ。成功するわけがありません。でも、このちょっとクレイジーな感じとか、偉大なアントレプレナーと同じ空気を感じさせますよね。いま話題のブルーボトルとかも似ているじゃないですか。知的で哲学的な雰囲気が多くの人を魅了しました。

「はてな村」と呼ばれる独特の文化圏を形成したはてなでしたが、それは少しカルトな方向に行き過ぎました。はてながキャズムを超えきれないまま、長い停滞期間に入っているあいだ、DeNAやGREEがゲームという金脈を発見し、瞬く間に企業価値を高めていきます。皮肉なことに、はてなが初期から挑戦していたユーザー課金、ユーザー同士のコミュニケーションや投げ銭システムは、DeNAがモバゲーで普及させることになります。

 

IPOとしての評価は最悪

そして、今2016年というこのタイミングではてなが上場するという。多くの人がなぜ?と思ったでしょう。

特にネットメディアに関するIPO環境は極めて悪く、本IPOに関するベンチャー業界の評判は最悪と言ってよいでしょう。

はてなの発行済株式総数は2,466千株ですが、今回のIPOが1株800円の価値がついたとしても、約20億円。2003年のインタビューから13年間、はてなの13年間はたった20億円の価値しか生み出さなかったのです。

グリー 1,303億円
ドワンゴ 925億円
ドリコム 70億円
GMOペパボ 97億円
グノシー 106億円

※2016/2/22現在の時価総額

この会社はなにか大きなことをやるかも知れない。かつてそう思っていた人々からすれば、この小粒さに対する失望感は、相当に大きいでしょう。

 

安定のUGC事業として

では、はてなという会社の事業は成長がないのでしょうか。

答えはもちろんNoです。この13年間で培った根強いファンコミュニティをベースにして、有料課金を軸に安定的な成長を続けていくのではと思います。

個人向けのホスティングサービスはネット業界においても相当固いですよね。ロリポップのGMOペパボや、さくらインターネットなど、双方ともチャレンジングな新規事業で株価も好調ですが、個人向け課金のホスティングという盤石な事業基盤があってこそでしょう。

Google AdSenseやアフィリエイト、noteなどの個人間のコンテンツ販売が普及するに伴って、ベースとなるブログサービスに対する課金もOKという方が増えるのでは、と思います。むしろ、稼いでいる人から見れば月額980円は安いでしょう。もう少し高くて良いので、高付加価値なサービスを展開すべきです。

確かに13年前に感じていたワクワク感は既に無い。でも、はてなのファンは10年後もきっとはてなのサービスを利用しているでしょう。きっとバフェットだって、はてなのような会社が好きなはずだと思います。 

 

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