『騎士団長殺し』 は村上春樹版ギャッツビー

騎士団長殺し」を読みました。(以下ネタバレ含みます)

 

率直に言って面白かった、おすすめです。ここ最近の作品では、といっても前作から7年振りですが、一番好きかも知れません。

本作は村上ワールドの集大成です。内省的な主人公、一人称の描写、それから井戸や不倫や高級車などの小道具、異世界との行き来き、など。初期作品に見られたテーマや技法が復活しています。

それからフィッツジェラルドへのオマージュ。免色さんですね。主人公は小田原の山奥に住んでいるのですが、その隣にある豪邸にたった1人で住む免色さんというキャラクターが出てきます。素性も職業もわからないミステリアスな大金持ちです。

そんな免色さんがなぜ辺鄙な山奥に1人で住んでいるのかという謎に巻き込まれていく…これが本作品のメインプロットですが…。

そう、免色さんのモデルは明らかにジェイ・ギャッツビーですし、プロット自体が「グレート・ギャッツビー」のオマージュです。ああ、きっといつか村上版ギャッツビーを書きたたかったんだな。読み終わってそう感じました。

さて、今時点で村上春樹も68歳。前作「1Q84」からのインターバルが7年ですから、このボリュームの長編はあと1作書けるかどうかではないでしょうか。そう考えると、「騎士団長殺し」は小説家のキャリアや自身のルーツを全て詰め込んだ、縁起でもないですが、遺作的な雰囲気すら感じてしまうのです。