『家康の遠き道』 権力闘争は昔も今も変わらずに

家康の遠き道

岩井三四二『家康の遠き道』を読みました。

長期間にわたり権力を維持することは、あれだけ盤石な安部政権が揺らいでいる昨今、いかに難しいか実感をもってよくわかります。

そう考えると約300年続いた江戸幕府は歴史上稀な偉業でしょう。本書は、この礎になったのが開祖である徳川家康にあるとして、この晩年をノンフィクションタッチで記した作品になっています。

具体的には、関ケ原の戦いに勝利して江戸幕府を開いた家康が、いまだ国内には豊臣家をはじめとする敵対勢力がいる中、じわりじわりと彼らを滅ぼし、権力を掌握していく過程を描いています。

映画や漫画では一つの戦いで権力が一変しますが、現実には変化は一瞬では起こりません。なので家康がポスト関ケ原にさまざまな人事や施策を打ちながら権力を固めていく過程はリアリティがありました。

その様は、まるで現在の政界や企業内の権力闘争とまったく変わらなく、とりわけ政治経済小説のよう。ですので本書に戦争ドンパチのワクワク感は期待できません。

最後に、本書はカバーがすごく良いですね。イラストレーションは井筒啓之さんで味がありますし、朱色のデザインも格好良い。