音楽と記憶は脳の同じ分野に保存されている、と読んだことがある。だから、音楽を聴くと、その当時を思い出すそうだ。みんな経験があると思う。
この週末、昼間にスコールがあって、外に出れなくなった。仕方がなくApple Musicをランダムで再生しながらゴロゴロしてところ、ふいに聴いたことのある美しいエレクトロニカが流れ、固まってしまった。
曲名は思い出せなかった。けれど、それより先に、夜明けの海岸線を辻堂の海へ向かって走ったな、というような些細だけれど、手触り感のある光景が浮かんでくる。レイハラカミの曲だった。
レイハラカミはエモいエレクトロニカが売りのミュージシャン、だった。特に『Trace of Red Curb』は「CDが擦り切れる」ほど良く聴いた。まあ、これまで忘れていたわけだけど、改めて聴いて、今でも実にいいと思った。
「Red Curb」とはレイハラカミの2作目のアルバムタイトルだ。つまり『Trace of Red Curb』とは「レッドカーブの思い出」ということで、昔のアルバムを自分でリミックスした、という意味のネーミングである。
リリースは2001年の秋だったらしい。だから、2020年の夏、ぼくの頭にフラッシュバックした光景も、恐らくその頃の記憶なのだろう。才能ある多くのアーティストと同じように、レイハラカミも2011年に早逝してしまい、新曲を聞くことはできない。