ノーベル経済学賞を受賞したアルビン・ロス教授の『Who Gets What』をGW休暇を使って読みました。
この本のテーマは「マッチメイキング」、つまり需要と供給のベストな組み合わせを探ること、です。「市場」という経済学の古典的なテーマのように見えますが、一番の特徴は、オカネでは需要と供給がマッチできない非営利的な「市場」の仕組みづくりに焦点を当てているところです。
例えば、人気ラーメン店の行列を解消する方法を検討しましょう。古典的な経済学ではこう考えます。ラーメン1杯の値段を上げていけば、どこかの価格で需要と供給が均衡するため、行列が解消する。実際に、証券取引所などの金融市場は貨幣価値によって市場がデザインされています。売り手は1番高い価格を提示した人に売れば良いのです。
しかし、この方法でマッチングが成立しない市場もあります。価格でマッチングする方法は倫理的に正しくないとされる場合が多いからです。
臓器の販売、大学の入学試験、企業の採用活動なども、供給側と需要側を組み合わせるという市場です。ですが、これらの市場はオカネでマッチングすることが倫理的に好ましくないとされます。1番高い金額を払った人が臓器移植を真っ先にできるというルールは正しくないと思う人が多いのでは?しかし、皮肉にも、価格による市場機能が働かないがゆえに、非効率になりがちだという特性があります。
本書は、このような価格が機能しない市場における最適なマッチングはなにか。どのようにマーケットをデザインするのが良いのか。というテーマを深堀した内容になっています。その意味でオンラインサービスを運営する方などは興味深い内容かも知れません。
読了した感想としては、実務レベルでの目新しさはなかったでしょうか。マッチングは、人類の昔から課題の一つだと思いますが、仕組みの実現にはどうしても政治的な要素が介入せざるを得ず、「理屈はわかるが実行できない」ものの典型です。
Who Gets What(フー・ゲッツ・ホワット) ―マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学
- 作者: アルビン・E・ロス,櫻井祐子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/03/19
- メディア: 単行本
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