マネックス証券の松本大さんによる『「お金の流れ」はこう変わった! 松本大のお金の新法則』は金融・経済の概念を理解したい人にお薦めの一冊です。
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初心者向けの金融・経済入門として本書をお薦めします。
『「お金の流れ」はこう変わった! 松本大のお金の新法則』は、マネックス証券CEOの松本大さんが自身のブログでつぶやいた金融・経済の概念を再構成した本です。
タイトルからすると、世界経済の予測をテーマにした本ですが、残り半分は金融トレーダー視点で書かれた自分なりの金融・経済観をまとめた内容であり、初心者向けの金融・株式入門本になっています。
金融・経済は、抽象的な概念が多いうえに、無駄に難しい専門用語が多く(例:量的緩和)なかなか理解しにくい。しかも、大学教授などアカデミックな方が書いた解説本が多く、どうしても難解になりがち。
その点、この本は現場目線で書かれているため、直感的にわかりやすく、量的緩和で不動産価格がなぜ上昇するのか?といった金融の大枠をよく理解できます。
一例として、株式市場や不動産市場がなぜ実需だけでは決まらないのか、つまりモノの値段はどう決まるのか?という質問に対する解説は次のように書かれています。
私はいつも「コップ」のたとえ話で説明しています。ここにコップが10個ならんでいるとしましょう。そして、コップに1リットルの水を順に注ぎ、「コップに注がれた水の量」を値段と定義します。(中略)
ここで先ほどの1京円の話を思い出してください。200兆円ものお金が原油消費国から産油国へ移動したといいましたが、地球上に存在する1京円ものお金は宇宙に行くことはできないので、アメーバのように地球上を回り続けます。
あくまで居場所は地球上ですから、地球上の資産という限られた選択肢の中で、「比較的いい場所」を求めて動き続けます。つまり、先ほどの話のように原油消費国から産油国へ移動したり、欧米から中国へ行ったり、株から国債に行ったりします。(中略)
そして、お金が向かうところの値段は上がり、お金が抜けていくところの値段は下がります。簡単にいえば、「日本の土地」というコップに大量の水(お金)が注がれれば、20数年前のバブル期のように土地の値段が高騰するし、「日本の株式」というコップから水が抜かれていけば、その分、株価が下がるということです。
ですから、値段というのはそのものの本源的な価値とは無関係で「その器に水がどれぐらい流れ込んだのか」という一時的な事象を表しているにすぎないのです。
ざっくりしたイメージはよく掴めるのではないでしょうか。
こんなテイストで「なぜ円高になるのか」ですとか「インフレとデフレはどう違うの」ですとか「株式投資のリスクを許容するには」といった良くある質問に対する回答が示されています。
さて、この松本大さんは東大法学部卒、ゴールドマンサックスを経て、ソニーと共同出資によりマネックス証券を設立したモンスターですが、毎日更新されているブログが本当に示唆に富んでいて、毎日チェックしています。ほぼ日・糸井重里さんの今日のダーリンもそうですね。天才が感じたまだ固まっていない考え方になにより価値があると思います。